『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』早速読みましたー
12日の発売日、この日は仕事を定時で切り上げ、本屋に直行。
家に帰って早速読み始め、あっと言う間に春樹ワールドに引き込まれてしまいました。
もうそれからは、ページをめくる手が止まらない。
桑田佳祐や桜井和寿がやっぱり「あの」曲を書いてくれるのと同じように、
世界中の春樹ファンが求める「あの」文体、「あの」展開を
読者の一人としてごちそうになりました。うん、お腹いっぱいです。
私は、村上春樹の作品はかなり読んでますが、彼に対する文壇の評論を知らないし
あえて読もうとしてきませんでした。
彼の作品に関しては、批判的に読むより、素朴な感想を大事にしたいと思うからです。
だから今回もほんとに個人的で率直な意見になりますが、悪しからず。
今回の作品も村上春樹のスタイルは相変わらずです。
職人のように実直に、そしてクールに執筆するそのスタイルは、
鉄道会社でこつこつと駅の設計をするエンジニアの主人公、多崎つくると重なります。
そして、個性豊かな「色をもつ」脇役たちは、これまでの作品の名脇役たちの
イメージとどうしても重なります。例えば『ノルウェイの森』で言うと、
頭が切れて冷ややかに世を見る「アカ」は「永沢さん」、
美人でメンヘラなシロは「直子」、ユーモアがありさばさばした「クロ」は
「ミドリ」、客観的で大人な「沙羅」は「レイコさん」といったところでしょうか。
これらのメンバーに、体育会系で人望に厚い「アオ」と
論理と観念の世界に生きる「灰田」というこれまた個性的な面々を加えたラインナップです。
逆に新鮮だった点。
これまで村上春樹の作品で主人公の抱える喪失感を補完するのは、
もっぱら恋人でしたが、今回の作品では
友人に焦点が当たっているのがおもしろかったです。
ある意味では、取り替えのきく?恋人よりも貴重で代え難い存在として。
後は、「牢獄」=嫉妬、「枠」=不自由、「器」=才能というメタファーも
気になりました。
特に「器」はカギなんですかね。
音楽の道に進んだ「シロ」が心を病んだ原因となった、超えられない才能という「器」。
「つくる」がフィンランドまで「クロ」に会いにいったとき、彼女は現在陶芸家で
「器」をつくる仕事をしていたこと。
そして彼女が「つくる」に言った、「空っぽの容器だったとしても、
それでいいじゃない。君はとても素敵な、心を惹かれる容器だよ」という言葉。
何気にうれしかった点。
主人公たちが青春時代を過ごした舞台が、地元「名古屋」だったこと。
「実直で飾りのないフォーム」として特急「あずさ」が主人公に気に入られている所。
ディテールや意味深な台詞も気になったので、
次よむことがあれば、もう少しじっくり味わってみたいです。
ではでは、こんなところにして、『ル・マル・デュ・ペイ』でも聴いてみます。