『本のお茶』を読んで 美を感じる茶人のこころとは?
『本のお茶』は、カフェ好きエッセイスト川口葉子さんが
岡倉天心の『茶の湯』を抜粋し妙訳によって編集した本です。
五感をくすぐる美しい写真とともに、
一文一文が身に染み入るような味わい深さがあります。
敷居が高いイメージのある『茶の湯』を初心者にもとっつきやすく、
それでいて「禅の思想」「タオイズム」「日本文化における美」といった
茶人の精神について、深いところまで触れることができます。
以下本文より引用
私たちがお茶を通して学ぶのは、美だけではありません。
人間へのまなざし、自然へのまなざし。いずまいの清潔さ。
贅沢なものよりもシンプルでつつましいものの中に
真のやすらぎを見いだすこと。(p14)
タオと禅のダイナミックな思想は、完全であることよりも
完全に一歩一歩近づいていくプロセスに重きをおいていました。
ほんとうの美とは、不完全なものを心の中で完成させようとする精神の動きの中に発見されるもの。
茶室では、客のひとりひとりが自分とのバランスを考えながら全体の効果を完成させるようにゆだねられています。(p111)
この本を読んで、あらためて、日本人が生活の中で見いだし、
感じてきた美について考え直すきっかけになりました。
ほんとうの美しさとは、物質ではなく精神であること。
余計なものは身につけず、わたしの中に美を感じるこころを持つこと。
はかないもの、不完全なものの内に美を見いだすこと。
また、禅の思想は、学生時代にほんの少しですが触れたことがあったので、
懐かしい引用に再会できたのもうれしかったです。
テキストは鈴木大拙の『禅と日本文化』
本棚ですやすやと眠っておりますが、良い機会なので読み返してみようかな。
対訳 禅と日本文化 - Zen and Japanese Culture
- 作者: 鈴木大拙,北川桃雄
- 出版社/メーカー: 講談社インターナショナル
- 発売日: 2005/12/02
- メディア: 単行本
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