古代ギリシャ数学発展の秘密とは!?〜「大人のための数学講座」を受講して〜

先週のお話になってしまいますが、2月8日(土)に
一本ゲタ大使館主催の「大人のための数学講座」に参加してきました。
テーマは「古代ギリシャの数学」、講師の森田真生さんは研究者でありながら
講演活動もされていて、まるで楽器を演奏するかのような語りのパフォーマンスで
数学の魅力を伝えています。

その時のお話がすごく良かったので、少し長いですが要約して文章に書き起こしてみました。
(日々の業務で議事録作成は鍛えられているので、こういう作業は苦じゃないです;
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数学というと、頭だけ使うイメージがありますが、実は身体と深い関わりがあるそうです。
例えば、羊飼いが30匹の羊を飼っているとして、1匹いなくなったところで気づかない。
だから手の指を使い数える、足らないので足の指を使う。それでもまだ足りないので、石に刻みの記をつける。
それがやがて数字になりました。このように、数学は人間の認知機能を補うための道具として発展していきました。

文明の発達した国では数学が発展しました。なぜならば、産業が生まれるためには
たくさんの人・ものの数を把握することが不可欠だからです。数ある文明国の中でも、他と少し違った発展をとげたのが古代ギリシャでした。
他国では、数学といえば計算の技術であり、生活に根ざした実用的な道具でした。
それに対して、古代ギリシャの数学は、経験よりも論理を、実際性よりも理念を重視した、
他と比べてより抽象的な概念を扱うものとして発展したそうです。

それはなぜでしょうか?
その前に、そもそも論理とは何でしょう?数学の証明は論理的に説明することが求められます。
例えば古代ギリシャの哲学者タレスは、「円は直径により2等分される」という定理を
証明したそうです。他国の文明ではそんな分かりきったことをいちいち
説明することはありませんでした。
古代ギリシャにおいて、数学の起源となった論理的な説明とはこのように
「当たり前のことをより当たり前のことで説明すること」です。
ただし、この「円は直径により2等分される」という証明も、論理だけでは理解できません。
円と直径を作図し、目で見るという直観的なプロセスがあって
はじめて分かったという感覚が生まれます。
このような身体的な直観が数学の理解には不可欠ですが、
この人間の直観に基づく分かったという感覚を他者と共有するために、
論理的な説明が必要なのです。

論理は、抽象的で難しいものというイメージがありますが、
その起源は、自分と違う他者と同じ感覚を共有し、コミュニケーションを
取ることにあります。古代ギリシャの理性的な営みは数学に限らず、
西洋文化の源泉となる哲学が発祥した地でもあります。
ギリシャ哲学では弁証法という対話的な問答を通して物事の本質を考えました。
このように、他者との対話によって真理を追求する古代ギリシャに根付いた文化が
数学や論理学を飛躍的に発展させました。

このような古代ギリシャにおける論証数学の中で有名なもののうち、
BC300年頃ユークリッドによって編纂された『原論』があります。
『原論』は幾何学の公理体系をまとめた書物です。
幾何学は目で見て直観的に分かる「図形」をもとに理解されます。
図形は「書く」という行為、身体的なプロセスによって生成するものです。
書くという行為を延長する道具として、図形が生まれたのです。
そしてその図形という道具そのものを対象化したのが、『原論』によって
まとめられた幾何学です。原論では点や線、円などに関して「公理」を設定し
体系化されています。この公理を用いて命題の真偽を証明していきます。
そして、やがてその手続きそのものが対象化され。「証明論」が生まれました。

このように、数学が扱う対象はどんどん抽象的になってゆきましたが、
もとを辿れば数学は身体感覚に基づく道具であり、みんなが共通して感じる
直観的な理解から始まっているのだと分かりました。
そして、直観的な理解を他者と共有するためには、論理的な説明による
コミュニケーションが不可欠で、そこからより数学の扱う対象が
論理的、抽象的になっていったという仮説も面白かったです。

講座の中では、アルキメデスの証明を実際にやってみたり
数学っぽい内容の部分もありましたが理解不足のため割愛します(笑)
また、森田さんのマシンガントークが何より面白かったです。
アルキメデス写本を巡る深イイ話とか、現代社会におけるアルゴリズム
意外な関わりとか、伝えきれないのが残念です。

森田さんが名古屋にときには、ぜひまた聴きに行きたいです。
そしてその時までにご無沙汰していた数学を
少し勉強し直してみようかなーと思ってます。

 

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)